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AI時代だからこそ必要とされるライターの条件~ライターだけじゃないよ~

「AIが普及していますが、ライター仕事に影響ってありますか?」

先日、ある経営者さんから聞かれたことです。

私はもともとアナログ人間なもので全然詳しくはないのですが、それでもインタビュー音声の文字起こしだったり、ちょっとした調べものだったり、ありがたく活用しています。以前はボイスレコーダーを数秒再生しては止め、また数秒再生しては止め、1時間のインタビュー音声を数時間かけて文字起こししたりしていたわけですから、ずいぶんラクになりました。技術の発展にご尽力された方々にまじ感謝リスペクトなのであります。

で、気になるのが「AIが出てきてライターは仕事が減っているのか?」ということ。ここからはあくまでも私個人の見解ですが「仕事が減っている(これから減る)ライター」と「むしろ重宝されるライター」に分かれます。

違いは、なんなのか? それは…

仕事が減るのは「形式知を文章にすることだけを生業にしているライター」、むしろ重宝されるのは「暗黙知を文章にできるライター」。

形式知:文章、図式、数字など、誰が見ても客観的にわかるようになっているノウハウ
暗黙知:個人の経験則や勘に基づいて身につけてきたことなど、その人の中にはあるけれど言葉で人に説明できるかたちにはなっていない主観的なノウハウ

生成AIに質問したら返って来る答えというのは「既に形式知化されていることだけ」です。

例えば「〇〇〇〇(有名な俳優さんの名前)」と対話型生成AIの質問欄に打ち込んでみると、出身地や学歴、過去の出演作品や受賞歴といった情報が表示されます。これらはすべて、既にインターネット上に公開されている「形式知」です。

一方、その俳優さんが、ある映画に出演した時点を境に爆発的に演技力が向上したが、その理由は本人もよくわかっていなかったとします。その場合「演技力が爆発的に向上した理由」は「暗黙知」ですから、生成AIに聞いてもインターネットで検索しても、ぜったいに出てきません。

つまり、その俳優が「演技力が爆発的に向上した理由」という暗黙知を形式知化することは、今のところAIにはできず「人だけができること」なのです。ここに、ライターの価値があるというわけです。

対話型生成AIが普及したことにより、とくにAIに詳しくない一般の人(私とか)でも、AIにできることと人にしかできないことの区別がわかりやすくなってきました。

私の体感としても、依頼のされ方が変わってきているように思います。以前は「自分で文章を書くのは大変だから書いてほしい」というふうに労力面を主として求められることもありましたが、最近は「簡単なことならAI使って自分で書けるけれど、クオリティが求められる場面ではプロに頼みたい」「思いを引き出した上で読み手の心に響く文章にしてほしいから北村さんにお願いしたい」といったように、技術や専門性に期待いただける場面が増えたかなと(私自身の成長に伴うことでもあると思いますが)。

ここまでライターの話をしてきましたが「暗黙知を形式知化できる技術が重宝される」のは、ライターに限ったことではないと思います。

例えば、事業承継の局面。何十年も頑張ってきた一代目社長の中には仕事のノウハウや人脈など膨大な「暗黙知」があります。これまではそれが暗黙知のままでも何の問題もありませんでしたが、いざ事業承継するとなると、それを二代目社長に伝えるために「形式知化」する必要が出てくるわけです。長年の経験と勘でやってきたからマニュアルにできることでもないし、言葉にして教えるのもムリ。どうすれば……という時に、その暗黙知を形式知化するサポートをしてあげられる助っ人が側にいれば、事業承継もスムーズに進むのではないでしょうか。

そんなふうに「暗黙知を形式知化できる技術」は、AI時代において人として人の役に立つための、重要な鍵になってくると私は思うのです。